ハルカさんが退職したことで、一旦は集団嫌がらせは幕を引いたようだ。
仕事面においても、私も独り立ちを果たしており束の間の平和が訪れていた。
あるお部屋に荷物を運んで、決まり文句のご挨拶をしたところ
「ここの女将ですか」
と言われたことがあった。アルバイトする年齢にも見えなかったせいもあるだろう。
「いいえ、違います」
とほほ笑んで返したが、気持ちは複雑だ。
この年でアルバイトをしていることの悲しみと、女将に見間違えられる何かを醸していた嬉しさと。
また、こんなこともあった。
お若い二人のカップルが夕食にいらっしゃった。
彼氏がお金出してるのかな、いいなー。など思いながら接客をしていると
「写真撮ってください」
と言われたので、
「わかりました」
と言ってカメラを受け取ろうとした。
そうすると
「いいえ、一緒に写真を撮ってもらえませんか」
と言われ、え?と思って見ると、どうやら彼女さんの方が私と一緒に写真を撮って欲しいようだった。
こんなお人形さんみたいな人に写真撮影を求められるなんて!とこちらが感激した。
思えばインドに行った時には、色が白いということが現地人たちを惹きつけたらしく、やたらとどこへ行っても
「Please take a picture」
と行く先々で記念撮影求められ、芸能人になったような気分だった。
写真撮影を求められることは、悪い気分がしないものだ。
また、ある朝。
半分やけくそで元気に接客し
「こちら●●でございます」
とご婦人方の団体へ笑顔で朝食を出していた時のことだった。
後ろでさわさわと、私についての噂話しをしているのが聞こえた。
「独身かしら?」
どうもありがとうございます、ご心配いただき。えぇ独身です。
でもそのさわさわとしていうトーンが明るく、ワクワクしているところから、きっと私に好印象を持ってのおしゃべりだったのだろう。
うん、誰かいい人紹介してください。こんな山奥でなけなしの若さを消費している場合じゃないんだ、本当は。
それでもこういうちょっとしたことが、嬉しくもあり、印象に残った。
またある時は、部屋担当として挨拶をしに行った時に、1000円ほどの心づけをもらった。
時給で働く私に1000円は大金だった。
それでもこれをちょろまかして喰らうダメージの方が心配だったので、泣く泣くその心づけの1000円は仲居頭に申告し、女将の所へ持っていくよう言われた。
しかし、果たして、みんなこれを馬鹿正直に申告しているのだろうか。
自分のポケットにしまってしまうことで、後でばれたり不具合は起きないものなのだろうか。
ハルカさんの1件から、信頼のおける友人となったモリタさんに聞いてみた。
「モリタさん、お客さんから心づけもらったらどうしてます?」
「あぁ、まぁ本来は女将に申告するものだけどね」
さすが過ぎる。期待を裏切らない。そうだろうなと思った。
アングラな世界で生き抜ける図太さを持ったモリタさんが、馬鹿正直にこのルールに乗っかっているとは思わなかった。
つまりポケットに入れても後からバレて揉めるケースは皆無のようだ。
次からは私もうそうしようと思い、2回目にもらった心づけはポケットに収めた。
そんな風にして、平和な側面も持ち合わせながら仲居生活が過ぎて行った。
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