約1か月半。お盆にスタートし、その後9月末まで私は契約した期間を走り抜けた。
当初は、期間満了が危ぶまれたこともあったが、鬼気迫る生活状況に伴い、幾多の困難を乗り越えて無事契約満了の運びとなった。感無量である。
「また桜の頃に連絡するに。元気でな」
と言ってくれた。
私の退職日には、他にも退職する子が居た。フロント係の女の子で、職種が違うためほとんど接点がなかったので初対面に近かった。2人が同時に卒業ということで、誰か送迎してもらえないか、旅館内で声かけがなされた。もし見つからなかったら、またナイトフロントの男性にお金を包んで麓まで送ってもらう形になるのだろうか。時給で働く身の上としてはちょっと辛い。。
そう思っていたところ、もさイケメンが送迎役に名乗り出てくれた。
ありがとう、もさイケメン!気持ちに応えらえれずにごめんよ~~。
もさイケメンがタバコをくわえながら格好つけて洗車する様子を眺めながら、心の中では感謝で拝み倒していた。
朝食の勤務が終わった後、もさイケメンと可愛らしい仲居仲間のオハナちゃん(韓国人彼氏の兵役明けを待っている)が見送りで来てくれて、私とフロントの女の子の計4人でもさイケメンの車に乗り込み、麓へ向けて出発した。
フロントの女の子はほぼ初対面だったが、わりとおしゃべりなタイプな上、フィリピン留学経験者というのが判明し、共通点が見つかり、車内は彼女を中心に話しに花が咲いた。
私も別におしゃべりが上手なタイプではないため、彼女の存在に助けられた。
もさイケメンの気持ちには応えられないが、送ってもらっている手前、気持ち良く過ごして欲しい。
そうして車内で他愛もないおしゃべりに興じながら、麓に着いた時、もさイケメンがご飯をみんなに奢ってくれると言う。
ありがたいけれども!
あの旅館に勤務ということは、そんなにお財布事情にゆとりはないだろうに。
しかし、フロントガールが
「いいんですか?ありがとうございます!」
と状況を軽やかに背中押ししたため、我々4人はもさイケメンのおごりで駅近のファミレスへ入った。
そうして、もさイケメンを気を持たせない程度に褒めて持ち上げ、彼に私なりの感謝の意をささやかに示した。
そうして昼食後、いよいよお別れというシーンになった。
私は気が付いていた。
本当は、もさイケメンもオハナちゃんも、私と連絡先を交換したそうにしていたことを。
でも私はその間をあえて作らせず
「じゃあ、ありがとう。元気でね!」
と軽やかにさっとその場を離れた。
ちょっと下をうつむく二人が見えた。
もともと人との繋がりを深めていくのが苦手な上に、私はこの先どうなるか全く先が見えないのだ。
もう次の勤務先は決まっている。
高原のオシャレホテルで働くことになっている。
中間で宿泊すると、その分お金を失うため、私はもうその足で次の勤務先に向かった。
最寄り駅からの交通費は支給されるから、ここからの移動はシンプルに楽しめそうだ。
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