勉強の合間に、ふと日帰り温泉に行きたくなった。
ここ最近謎に体がガチガチで、前日行ったマッサージもそこまで効いていないような印象だった。
なので休憩に、私は湯船に漬かりたいと思った。
車社会のいいところは、こういう無茶ぶりな要望をわりと簡単に実現できるところだ。
早速グーグルマップで検索すると、私のいる場所からはピンとくる施設がヒットしなかった。
この界隈、なんだったら県境や隣の県くらいまでのめぼしい日帰り温泉は、ほぼ行きつくしていて、その時の私のインスピレーションに上がる施設はなかった。
今まで行ったことないところに行きたい。もしくはすごく近いか、すごく安いか。
そんな感じでマップを見ていた所、明らかに銭湯と思われる店名が候補に挙がってきていた。試しにページを開いてみたところ、画像にあがっている写真はどれも私のハートをつかまなかった。けれども先に私が述べた希望要件は満たしていた。
また口コミに書かれていた内容から拝察するに、未だに400円台の良心価格で運営しており、販売ジュースも軒並み100円。有名なラーメン店の近くにあり、時間つぶしに入ったというコメントもあった。何となく応援したい要素もありそうな銭湯だ。けれども、写真がそそられない。しかし私は「未知、安い、近い」に負け、そこに行くことにした。
駅に近い立地のため、土地代の兼ね合いから駐車場が期待できないと思いきや、きちんと駐車場が用意されていた。駐車場には平日の夕方というのに、車が数台停まっていた。
未知な様子と、駐車場の整備の良さから、思いもかけず期待が高まる。
正面玄関に行くと、そこは事前情報にあった画像そのままの姿で、扉がガタついている靴箱や、2つの浴槽、熱帯魚の入った水槽などがあった。中に入ってみたところ、私がこれまで経験してきた銭湯と特段変わった様子はなかったが、入り口のアメニティが「せっけん 20円」など、昭和価格にとどまっている様子に、経営者の善意を感じた。
私は都内23区に居るときに、風呂のないシェアハウスや新聞配達の寮に入っていた際、暮らしの糧として近所の銭湯を利用していたことがある。また、かつてさくらももこのエッセイで、銭湯にフューチャーした話があった影響で、その当時住んでいたエリアで銭湯巡りをし、自分の中でのランキングづけをしたこともあった。
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そういう数々の銭湯経験値を持っていたことから、今回訪れた銭湯は個人的に特筆するほど心打たれる要素は一見ないように見えた。
けれども、気持ちを惹かれたのは価格設定だった。
都内の銭湯ですら、今現在500円越えだった気がする。それなのに、大人1名450円。これは県の意向ということもあるが、それ以外の商品ラインナップについても、昭和価格を固持している。
建物の躯体は口コミにもあったとおり、老朽化しているであろうことが目視できるが、昭和に作られたものなのだろうか、そこかしこに現役として活動している、手作りっぽいロッカーや大きな籠、真ん中に据えられたテレビ、もうきっとこのお店はないだろう協賛店からの湿度計(電話番号が*-****という、真ん中一桁!という表示だった)。
リンクに貼ってあったホームページも、20年以上前に作られた、今は見ないような簡素なもの。そして、棚にはスポーツジムなら有料でプライベートロッカーとして運営するであろう、個人の持ち物を納める棚がオープンにおいてあり「袋に名前を」の案内書きがあった。
私が行った時間も平日の16時くらいだったが、お客さんは少ないながらも常に数名いて、特に老人のコミュニティエリアとなっている印象だった。
この銭湯は営利目的ではなく、もはや社会貢献、ボランティアとして運営しているように感じた。
そして、この銭湯を愛している近所のご老人がたくさんいそう。
そこいらの町おこしやビジネスをやりたい若者の手を借りれば、間口に貼ってある掲示物をcanvaなどできれいに作り変えて貼り替えたり、ガタついている靴箱の扉を直したり、魚の水槽をきれいにしたり、店内にあるカーテンにしている布を洒落たものにしたりなど、ちょっと手を加えればぐっと良くなりそうな箇所が散見された。
私が暇な小学生か中学生くらいだったら、ボランティアでそういった作業をすることを名乗り出たくなる感じだ。
きっとお金をかけてどうこうまでするつもりはないのだと思う。きっとオーナーの社会参画と地域の愛されるコミュニティとして、ここは運営されているのではないか、と思った。
私が使った際には空いていたこともあり、印象も悪くなく立地も良かったので、また機会があったら行くかもしれない。
昭和っぽさを感じられつつ、私には東京の思い出を思い出させる施設でもあるので、北関東で銭湯に巡り合えたことに、何となくノスタルジアを感じた出来事だった。
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