職場への見栄と意地でTOEIC800点を目指し始めたが、なぜか脱線してオンライン英会話ネイティブキャンプのイケメンフィリピーノ講師・通称羽生君に、人生の全力投球がはじまった。
そしてなんとプライベートで遊びに行ける約束を取り付けるも、突如ロマンス詐欺疑惑が浮上した。
アラフォーの私の身の安全はいかに。
先の知人の助言を基に、急激に私はロマンス詐欺への知識を蓄えはじめた。
熱心にロマンス詐欺について調べていると、なんと私の御用達のネイティブキャンプを使ったYoutubeでロマンス詐欺の動画が上がっているのを発見した。
これを発見して、私は熱心にこのチャンネルを見るようになった。
彼はネイティブキャンプにきちんと打診をした上で動画の撮影を行い、そして数多の講師陣とオフラインで会っているようだった。
彼のこの「ロマンス詐欺」疑惑の講師に会いに行く、その一連の動画を概ね鑑賞した。
いろいろと作られている感もどこかしらなくはないが、結局のところ、ロマンス詐欺のニオイをさせつつ、謎めいた雰囲気を醸しただけの、ただのいい人だったというオチだった。
オンライン英会話におけるロマンス詐欺の事例をつかめないまま、私は羽生君から金をせびるような内容の会話が発生しないか、神経をとがらせていた。
そんなある日のレッスン、羽生君は自身のヒストリーを語りはじめた。
「僕の母と、本当の父は日本で出会って、そして帰国して僕と兄弟を生んだ。父はアメリカへ渡って家を買い、僕ら家族を呼び寄せる予定だった。けれども父は不倫をして、そのままいなくなってしまった。母は再び日本に渡り、日本人のボーイフレンドに出会った。彼は僕ら家族に送金してくれて、僕たちはそれで助かった。僕は友人に訪ねられたら日本人のボーイフレンドの名前を友達に伝えていた。けれどもある日、日本人のボーイフレンドは連絡が付かなくなった。しばらく連絡が付かなかった後、ようやく電話がかかってきた。彼は肺がんで、長くはないとのことだった。それっきりとなり、送金も途絶えた。僕らは飢えて、泣いた。クラスメイトに見つかったら恥ずかしくて、僕は近所の飲食店でバイトもしなかった。食べ物がなくなって、食べるものがなくなった時、母は「私はもう食べたから、あなたたち食べなさい」と食べ物をくれた。本当は自分は食べていないのに。そうして、ある時ネイティブキャンプのチラシが入っていた。僕ら家族はネイティブキャンプに応募して、みんな講師として採用された。そしてネイティブキャンプでものすごく頑張って働いて、今ではオフィスを構え、エアコンや冷蔵庫を買うことが出来、きれいな水道を引くことも出来たんだ」
私は黙って聞きながら、時々相槌を打ち、彼がなぜこのタイミングこの話しをしたのか、という背景に思いを巡らせていた。
なんで泣くほど飢えているのに、人頼みなの?
そのジャパニーズボーイフレンドって人間出来すぎじゃない?(大して会いに行ったり来たりしてないっぽいし)
飢え死にしそうなのに、なんで人目を気にして働かないの?(あたしなんて親に頼らないで生きるために、バックパッカーの経済負債のリカバリーのために夜職の経験もあるんだぜ?)
これらの思いから、私の中で羽生君を ”クソ野郎” 認定していた。
どうしよう、私をそのジャパニーズボーイフレンドの身代わりのようにするつもりだろうか。
で、あれば私では役不足。貧乏アピールをして的を外させなければいけない。
それにしても、もう飛行機のチケットを取ってしまったのでキャンセルができない。
最悪、行かなかったとしてもチケット代は返ってこない。なんてことだ。
でも、ところで、GWに羽生君のところへ行くという、もう一人の生徒はどうなのだろう。
彼女もまた、このような金づるのターゲットなのだろうか。
煩わしいと思い続けていた、まだ見ぬ彼女が突如頼もしい存在に思えてきた。
あわよくば、炭鉱のカナリアとして、事象を探らせるサンプルとして観察するのもアリかもな。。と悪い私が顔をのぞかせ始めた。
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