二次元の世界の推しだった、オンライン英会話講師・イケメンフィリピーノの羽生君。他の日本人生徒が遊びに行くという件にやきもちを焼き、大騒ぎした結果、現在3泊4日の来訪の2日目を迎えている。
今日も私のリクエストで、朝の市場に行くことになっている。本当は5時に起きて行く市場があったのだが、私が寝坊した結果、遅くまで開いているマーケットにお買い物に行くことになった。
一家に所有されている唯一の車は、役所勤めのお兄ちゃんのもので役所への通勤に使用することから、私と羽生君はトライスクルと呼ばれる、フィリピーノ市民の足でマーケットへ向かうこととなった。
トライスクルとは、バイクにプラスαの乗り物をくっつけて走る、庶民向けタクシーともいえる。
走力となるバイクの排気量を私は詳しく知らないが、取りあえず日本では考えられない酷使をされていることが想像できる。また乗車に際しても、地面に近く、ガタガタと揺れ、快適にはほど遠い作りとなっている。なので日本人からしたら、まるでオモチャみたいな作りなのだが、リフレッシュとして乗るのには面白い。
彼の家の近所にトライスクルの溜まり場のようなところがあり、そこに行くと難なくトライスクルがつかまる。概ねトライスクルは外国人はぼったくるとのことで、ここはご近所であり生粋のフィリピーノの羽生君が行先と値段とをやり取りする。
そうこうして、トライスクルに乗り込む。スペースは極めて小さいので、羽生君とくっつく格好で乗る。(セクハラ)
ガタガタと走るその先に、最寄りのマーケットが見えてきた。
インドなどでみたような、露店でフルーツを売るような人や、ハエがたかりながらも魚を並べている人などを道路沿いに見る事が出来た。そうして歩いて行った先に、建物に入り組むようにして奥へと続くマーケット(市場)があった。この雰囲気、過去旅したインドを思わせ、なつかしさに胸が高鳴った。これぞアジア、海外!しかし「インドみたい」と言ったら気分を害するかもしれないので、その思いは私の胸だけに秘められた。
本日のお買い物の目的は、私のリクエストによるランチのためのもので「ブードルファイト」を実施していただく予定となっている。
ブードルファイトとは、昔兵士同士が絆を深めることと、時短効率を図った結果に生まれた食べ方で、バナナの葉っぱの上に様々な食べ物をのせ
手づかみで食べるものである。
このリクエストをした時に、羽生君に聞かれた
「手づかみで食べるものだよ?」と。
知っている。けれどもガイドブックで映えていたことと、他に目につく面白うそうなものがなかった故だ。ガイドブックを見て改めて思ったのだが、フィリピンというのは観光地として有名なのはビーチくらいで、見どころのある歴史名所だとか、インパクトのある伝統料理だとかがあまり見つからなかった。
歴史的にはスペインの植民地であったりとか、太平洋戦争で日本が侵攻してきたこともあったりだとか、ただでさえ台風の脅威にさらされ、気候も暑い。
諸々の要素で、安定した歴史の構築というのはなされない土地柄だったのではないかと感じられた。それでも南の島で食べ物に困ることもなく、陽気に暮らせていたのに、外から文明化を強要され、無理くりそこに追い付こうとして、いろいろひずんでいる、という風にも思えた。
まぁそんな訳で、限られた選択肢の中で興味を引いた、ブードルファイトが採用される運びとなった。
ブードルファイトの実施はレストランなどでもやっていたが、節約のためにお母さまが料理をしてくださることになっているため、私は市場で目についた食べてみたいものを購入すればよい流れとなっている。
羽生君は、お母さまに依頼された、実施に必要な最低要件の食材を買い集めていく。それも極力私が負担するようにしていた。
市場の中にはちょっとした屋台があり、チョコレートのお粥などが食べられるようで、早速食べてみることにした。羽生君にも促したが、彼はいらないという。
なんでもこの市場の雑多な雰囲気と独特のニオイの中では、食欲が失せるとのことなのだ。
どっちが現地人だかわかりゃしない。
私はインドな雰囲気を思い出しながら、楽しく食させていただいた。
そうして市場でのお買い物を済ませた後、向かいにある大きめのスーパーに入った。小さなモールとでも言うべきか。スーパーに併設されて、携帯ショップなどのテナントが少しばかり入っている。
スーパーは先ほどのの市場に比べて割高で、市場にないものをスーパーで買い足すようだ。
ここで手ごろなお土産でも買っていこうと思い、ガイドブックでみたモリンガのお茶などをいくつか購入した。
そうして買い物を終えたところ、帰りはお兄ちゃんが車で迎えに来てくれるとのこと。なぜなら、ご自宅のプリンターを彼が壊してしまい、その修理のためにお兄ちゃんは仕事を休み、車を出せるようになったからだというのだ。お兄ちゃんが向かえに来るまでモールで待機していなければいけない。
羽生君は、私を気遣ってか、上のフロアのゲームセンターのようなところにも連れて行ってくれた。
私はフィリピーノたちの文化レベルを推し量るために、ざっとゲームを見渡したが特段やりたいと思うものはなかった。
羽生君が「何かやりたいものある?」と聞いてきたので、いいところ見せられるんじゃないかと、バスケットボールをゴールにシュートするゲームをやってみようと思った。
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