二次元の世界の住人と思っていた、イケメンフィリピーノの羽生君と近所のスーパーにお買い物に来た。いいところ見せようといきりだし、バスケットボールを入れるゲームをやろうとする私。
「じゃあ、これやってみる」
そういって、買い物袋を置くと小さな水たまりが目に入った。
どうやら袋から水が漏れているらしい。
「見て、見て」
慌てて袋を持ち上げて、二人でその場を走り去った。
「たぶん、カニが袋を破ったんだ」
そう言って、袋を抱えて出口の方に向かおうとした、が、外は暑い。
「お兄ちゃんが来るまで、ジョリビー(フィリピンの国民的ファーストフードチェーン店)で待とうか」
となった。
「私出すから、好きなのいいよ」
と羽生君に注文を促した。
すると羽生君は、お腹が減っていないと言っていたにも関わらず、がっつりセットを頼みだした。
こういう時に清々しいくらい遠慮がない注文をするのは、お国柄の違いなのだろうか。
もしくはあんまり裕福ではない故の、もったいない精神からなのだろうか。
私は空港で頼んだものと同じく、ストレートのはずなのに甘くなっているアイス珈琲を頼んだ。
羽生君のオーダーを呼び出しベルで待っている間、私は水漏れの原因となっている袋が気になっていた。何とかして、漏水を食い止めたい。お店も汚すし、食品衛生的にもまずいと思う。
各袋をチェックする私に羽生君は
「もうしょうがないよ。どうせまた別の袋に入れても穴が開くんだから」
「でもこのままじゃ、車が汚れちゃうよ?」
「掃除すればいいよ」
そのように言う羽生君を他所に、私は先ほどジョリビーのカウンターでもらった袋と紙ナプキンで、漏水を食い止める算段を持っていた。そうして各袋をチェックした果てに、ついに漏水の原因を突き止めた。
「本当だ、カニが袋を破ってる」
カニの入った小袋を持ち上げ、穴の開いていない袋に紙ナプキンを敷いて、カニの鋭角なハサミが直接袋に当たらないようにして、その中にカニの小袋を重ね入れた。
一旦は漏水が止まり、私も自分のやりたいように出来たことで気が済んだ。
そうこうしているうちに、羽生君のセットが出来たようで、呼び出しアラームが鳴り、羽生君はセットを取りに行った。ジョリビーはあり得ないくらい炭水化物祭りで、バンズなどのパンを使ったバーガーがありながらも、パスタや米がセットになっていて、凄まじいバランスだと感じざるを得ない。
羽生君がセットを食べる横でアイスコーヒーを飲み、お兄ちゃんたちの到着を待つ。
するとお兄ちゃんとお母さんが現れた。二人は壊れたプリンターを修理屋さんに預けてきたようだ。
そうして、羽生君が食べているところにみんなが集合した。
羽生君はげっぷをしている。
私は苦笑しながら「自分が食べたいっていったんじゃん」と日本語で呟いた。
お母さんは日本に10年ほど居た経験があるため、日本語が堪能だ。
羽生君が食べきれなかった分をお兄ちゃんが食べている。
帰りにお母さんに、ジブニーに乗りたいか?と聞かれた。
ジブニーはトラックを使った乗り合いバスのようなもので、フィリピンの国民的交通手段だ。日本人が乗ったら、カッターでバックを切られて取られるとか、財布をすられると、セブ留学の際に先生方にさんざん脅された乗り物だ。しかし私はインド帰りということもあったため、その脅しを無視して、一度だけトライしてみたことがある。ほんの短い距離ではあったが。
そんな思い出の乗り物なのと、私はローカルな乗り物が好きな性質なので、
「乗りたいです」と間髪入れず答えた。
そうして、お母さんは思い出作りのために、とジブニーに一緒に乗ってくれることとなり、羽生君とお兄ちゃんは車で帰宅する流れとなった。
お母さんに連れられて、ジブニーの乗り場に行き、ジブニーに乗り込んだ。
次々と人が乗ってきて、中がいっぱいになった。
お母さんは扇子であおいで風を送ってくださる。
お金がないのに、わざわざお金を使って公共交通機関を使ってくださり、またそのお金も出していただいた。とはいえ、私は到着時に交通費とこの旅の私のガイドフィー、そして宿泊や食事代を含めた費用のつもりで、まぁまぁの金額を渡してはいるのだが。
そんな風にして、ジブニーを使って羽生君のおうちへ帰ってきた。
羽生君たちも、もちろん帰宅している。
この後は一休みして、私が所望させていただいたブードルファイトが開催される。
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