闘鶏農場を見学した我々は、車の中で夕日を見る格好となり、教会に着いた頃には辺りは日が落ちて暗くなり始めていた。
ライトアップされた教会は美しく、落ち着いた雰囲気だ。
どこの国も宗教にはそれなりにお金を投資しているため、宗教関連の建物って立派で見ごたえがあるものが多い気がする。
ライトアップされた教会の前で写真などを撮った後、夕方の礼拝の時間がはじまっていたようで、私たちは静かにそうっと後ろの方の席に入りこんで、終わりかけの礼拝に参加した。
よくわからない神父様の説教を聞きながら、静かに立って礼拝に参加。雰囲気を楽しむ。
すると、そのお祈りの一環なのか、隣の人と手をつなぐような指示が出る。
なので私はお隣の羽生君の手を握る(といっても遠慮がちに触る感じ)格好となった。
出立前のお告げで、艶めかしい迫り方をしないようにサイキックレディに忠告を受けていたため、私はそのチャンスにもがっつく感じではなく、うれしいけど遠慮がちなスタンスで臨んだ。
そうして触れた羽生君の手は、生あったかい感じだった。たぶん体温が低いタイプなのだろう。けれども冷たいとも違う感じだ。
心の中で狂喜しながらも、そんな様子はおくびにも出さず、こういうチャンスを作り出す宗教や学校のイベント指示って有難いなぁ、とラッキーなハプニングに心が躍った。
そうして手をつないで祈りか何かを捧げた後、礼拝が終わり、神父様が何か食べ物的なものをくれているようで、それをもらいに中央のメイン通路に流れ出て、前方へと進んだ。
お母さんが「ここで結婚式とかも挙げたりするんだよ」と言った途端、羽生君は私と並んで歩いていたのに、突然距離をとった。
私を結婚相手とすることが不本意なのか、浮気の彼女をひきずっているのか、もしくは私に遠慮をしての振る舞いかはわからないが、私はあえて無言でその様子を確認したうえで、ペースを変えずに神父様のところに行った。
神父様は駄菓子屋で売っているミルクせんべいのようなものを配ってくれていた。
お母さんが「これはキリストの体の一部に見立てて、みんなにこれを分け与えてくれているんだよ」と説明した。私はもらったものを口に入れたが、彼のお兄ちゃんとその友達は食べなかった。
羽生君は私に付き合ってか、食べていた。
隣の部屋にはろうそくがたくさん並んでいて、皆そこに祈りを捧げるのだと言う。
願いを添えてそのろうそくを灯していくのだそう。
羽生君とお母さんは、ろうそくを買って灯していた。
羽生君は何を願っているんだろう。
彼女のことをひきずってなければいいな、と思った。
彼の願いの中に、そういうことが含まれていないといいなと。
コメント