私の心を上滑りしていく ”ハッピーバースデー” の歌に、げんなりしながら寝床に横たわると、友人がほぼゼロと言ってもいい私宛に、携帯へメッセージが届いているのが目に入った。
律儀にも、それは妹からだった。
彼女も歪んだ育ち故、行動動機には ”かわいそう” が絡むことが多い人物だ。
彼女は私が受けた虐待を受けずに育つことができた上、私のように迫害された立場で家庭に置かれることもなかった。それ故に、私のように成人後、メンタルが危機的状況に追い込まれることもなく、小学校時代に過呼吸を起こして救急車を呼ぶようなこともなかった。
しかし、それゆえに家庭に癒着してしまい、自立の機会を逃し、パラサイトシングルとして中年まで来てしまっている人物だ。
そして、私はそれ故に、一刻も早く家から離脱しようともがき、ボロボロな状態でも何とか家から離脱し、莫大な損傷を追いながらも何とか自立の道を打ち立てることが出来ている。
そんな妹から、背景に”かわいそう”という動機と、逃げ出せた私への”眩しさ”とが入り混じった感情が背景にありそうな、シンプルなバースデーメッセージが届いていた。
まさか私が海外で、こんなに変わった体験をしながらバースデーを迎えているとは思っていないだろうと思い、ある種の見せびらかしの気持ちも働いて、写真付きのメッセージでも返信しようかと思った。けれどもそれを思いとどまった。
もはやいかなる情報も、原家族に漏らしてはいけない。例え、私のことを理解して同情をしている風を装っている妹でさえも。彼女は結局のところ、精神的に自立できていないので、いざという時に親を擁護し、私か親かで行くと親を選び、未だ親の庇護のもとでないと生きられない状況に自分を追い込んでいるのだから。
なので、私はそのメッセージに返信をしなかった。
その代わりに、出立前にこの旅について相談を持ち掛けたサイキックレディのことを思い出した。
いろいろなアドバイスをしてくれた最後にこう締めくくった。
「この旅でポイントになるのは、この3枚のカードみたい。①純粋に少女のように旅を楽しむこと。②自信を持ちすぎるくらい持っていくこと。③この旅で全てを完結させようとしないこと。ここから長く続いていくご縁になりそうだから焦らないで大丈夫」
そう言われたことを思い出した。
そして、今日まさに自信(confidence)がキーワードになる激闘を、羽生君と交わしていた。
「What’s your confidence(あなたの自信はなんですか)」
私は今日訪れたナイトマーケットで、このワードを喚きたてていた。
外見だけが自分の自信だと言い切る羽生君。だから自分が老いてしまうのが不安だと。
そんな考え方はやめろ、と騒ぐ私。
あぁ、予言がばっちり当たっている。
まさに自信(confidence)は、この旅のキーワードになりそうだ。
なので私は、その驚きと状況をシェアするために、妹ではなくサイキックレディにメッセージを送った。
今日起きた出来事、もらった予言がばっちり当たったことなど。
残りのフィリピン旅行も楽しむつもりだ、ということを。
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