イケメンフィリピーノ・羽生君と一緒に都市部へお出かけ。そこで彼のお友達とも合流予定だ。チャットGPTによると、フィリピンの方は二人でお出かけするのは特別な関係を意味することがあるらしく、だいたいは複数人で出かけるなり何かするなりするらしい。
とはいえ、彼のお友達が合流する移動時間は、私と羽生君の二人行動だ。
例の小さなトライスクルに二人で身を寄せ合って乗り、都市部に向かうバスの乗り場へ向かう。
そこまでの道中、この空間で無言と言うのが気まずく感じるザ・日本人な私。
かといってライトなトークを振れるほどの語学力はない。
なので結果、私は後でゆっくり伝えようと思っていた、朝に書きつけた ”confidence(自信)” をテーマにした話題を羽生君に始めた。
「今朝、私も自分の自信についてまとめてみたの。私の自信はスポーツを通じて得た経験。スポーツをやる以前は、私も人の外見をすごく重視していたの。でも、スポーツを通じて内面とかもっと違う部分が本当に大事なんだって学べた。あなた前に、若いうちに死にたい。外見が衰えるのが怖いと言っていたのが気になって。昔の私ならそう思ったかもしれないけれども、今は違う。あなたにも、若い時間以外の時間も人生を楽しんでほしいって思う」
ガタガタと揺れるトライスクルの中で、朝まとめたノートを頼りに、言いたいことををつっかえつっかえ、初歩的な英語懸命に伝える。
こういう内面の話しをじっくりするのに適した状況ではなかったが、狭い空間×無言 が耐えられなかった性分ゆえ、そして拙い語学力ゆえに、この落ち着かない空間で大事な話しを持ち掛けてしまった。
羽生君は、私の話しを聞いた後、話し出した。
「僕は以前、自分の顔が醜いために1か月ほど家から出なかった時期があった。背が高いからなおのこと目立ってしまった。だから僕は家に引きこもった。でも自分を変えようとスキンドクターに通ってニキビを治したりして、努力した。そうして今は自分の外見に自信を持てるようになった」
このイケメンが人に揶揄されて引きこもるレベルのおブスだったなんて想像できない。整形でもしているんだろうか。
でもこの独白で、いろいろなものが繋がった。
一家が飢え死にしそうな時でも、クラスメイトに見られるのが嫌で近所でアルバイトをしなかったこと、やたらと外見にこだわるのは彼の一つの成功体験ゆえであること。
日本でも、後咲き系の男子に出会ったことがあるが、彼らはやたらと外見を気にして、そこいらの女子よりも女子力が高く、朝からていねいに髪の毛にアイロンなんて当てていた(その人はメンズエッグの読モだったっと言っていた)
でもそういった後咲き系にしては、元が良すぎる。性格も穏やかでやさしそう。
私の語学が追い付いていないだけで、何かアレなところがあるのだろうか。
「わかるよ、そういう考え方。もし私が若い頃、スポーツをしなかったら私もきっと同じように考えたと思う。でもその考え方はあまりあなたを幸せにしない。少なくとも私にとってはそうだった。だからあなたにももっと人生を楽しんでほしいから、外見以外の自信も持ってほしい」
そんなことを話しているうちに、バス停に着いた。
街に行くバスの切符は羽生君が出してくれた(といっても、私はまとめて最初にこの旅に想定されるお金は最初に渡したつもりだったが)
バスに乗って、後ろの方に座った。
「インドに行った時、施しをしたりした?」
ふいに聞かれた。
「あんまり。日本はチップを払わない文化だから。でもたまに子供にあげたりしたかも」
静かなバスは、先ほどよりも話すのに適した環境に思えた。
声を落として私は
「ねぇ、さっきの続き話してよ。私の自信については話したから、あなたがこれから取り組む外見以外の自信について教えてよ。それが私の誕生日プレゼントだよ」
そう言うと羽生君は
「ここで言うのは恥ずかしいよ。メッセージで送るからそれを読んでよ」
そう言ってSNSを介してメッセージが送られてきた。
”私はこれから、健康的な生活に取り組み、内面の充実を図りながら、毎日を感謝して過ごします”
それを読んで私はとりあえず満足した。
「すごくいいね。あなたならできるよ!」
そういって彼を励ました。
「私の知っている人で、病気を持っている人がいるんだけれども、それのせいかもしれないけれども、すっごく人に優しくて魅力的な人がいるの。時々大変なことは、その人の優しさや魅力になることもあるから悪いことばかりじゃないよ」
「そうだね。だから私たちは、不運な目に遭うことを許さなければいけない。こういうことを話し合えたということもとても大事なことだと思う。だって僕らは友達だろう?」
「うん、そうだね。友達だね」
言葉の拙さゆえなのか、彼らの純粋さのせいなのか。
こういうやり取り、久しぶりだなと思った。
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