バスは都市部の大型商業施設に隣接するバスターミナルに到着した。
羽生君について歩きながら、お友達と合流する地点へ向かう。
私の気のせいかもしれないが、彼のお友達のレッスンを取ろうとすると、羽生君がいい顔をしない印象があったので、できるだけお友達への接触を控えようと心掛けている節が私にはあった。
商業施設内で待ち合わせをしているらしく、施設の中をウロウロと歩く。
それにしても、スラっと背が高く顔だちも整っている羽生君。
一体、この彼が引きこもってしまった時と今とでは何が変わったのだろう。
「ねえ、見た目を改善するために何をしたの?」
「スキンドクターに行って、ニキビを治してもらった。後、歯の矯正をしたよ。」
「それだけ?手術とかは?」
髪もサラサラだし、ニキビと歯並びだけで引きこもるレベルになるんだろうか。
整形とかはしていないんだろうか。してたらちょっとがっかりだけど、ここまで変わるなら興味深い。
私は羽生君の顔に手術跡がないかジロジロと見上げた。(そんな跡が目視で確認できるレベルの医者なんていないんだろうけど)
羽生君は私が遠慮なく彼の顔をジロジロ見ている視線を感じながら、
「手術はしてないよ」
と答えた。
そうして、トイレ行ったり、喉が渇いたと私が言ったたため、ケンタッキーの前のテーブルでお友達を待ちながら飲み物の注文に行ったりした。
そうこうしているうちに、お友達が現れた。
彼は利発そうで、ユーモアとちょっとしたズル賢さを備えていそうな、抜け目のない顔つきをしていた。
一応、オンラインで少し対話していたため、オフラインでの再会を喜んだ。
彼の腕にイレズミがしてあったので、私も数日前のナイトマーケットで買ったイレズミシールを貼った腕を披露した。
羽生君が
「それはナイトマーケットで買ったシールなんだ」
と私が説明する前に、お友達に即座にさしはさんだ。
もうちょっと余白とジョークを楽しませてくれてもいいのに。
そうして3人が合流した後、私が予約したホテルに荷物を置きに行くことにした。
みんなでタクシーに乗ったが、私も羽生君も睡眠不足もあり、お友達もお疲れなのか、車内には眠たい気だるい空気が漂う。道も渋滞しているため、エキサイティングな要素はない。強いて言うなら、 ”この車間で大丈夫なん?” という距離感でバイクやバスが迫ってくる時に、車間を目視で確認する時くらいだろうか。
さて、このホテルを取るときも私は迷いどころがあった。
羽生君のご自宅に泊めていただく以外の場合、どのように宿泊を手配するのが正解なのだろう、と。
今回同行してくださる羽生君のお友達は都市部に住んでいるのだと言う。
羽生君とお友達は、お友達宅に泊まって、日中に合流して観光に行くのだろうか。
それとも私が彼らの分の宿も手配するべきなのだろうか。
でもその場合、部屋はどうするの?
日本的な感覚なら別々だ。
旅行前のある日のレッスン中、その話題が羽生君から上がった。
「都市観光をする時のホテルはもうとった?」
「ううん、まだだけど」
オープンクエスチョンで相手の考えを探ろうと、AとBどっちがいい?とかではなく、茫漠な回答で羽生君のアンサーを待った。
「ベッドが二つある部屋を取るといいよ。一つは君が使って、もう一つは僕と友達が寝るから。狭くても大丈夫だよ」
「うん、わかったーー」
といいながら、私はこの答えに頭を抱えることとなる。
部屋が一緒ってどうなの? もし羽生君とお友達が実は危険な人物だったら、私は絶対絶命だ。とはいえ、ある意味では絶好のチャンスとも考えられる。羽生君をこの短期間で捕獲するなら、色仕掛けで押し倒す案は一つの考えだ。出し惜しみする年でもないだろう。(とはいえ、そんなことはしたこともないし、そういうキャラクターでもないのでやり方も全然わからないし、自分がそうできるイメージが全く浮かばない)
迷った時の神頼みで、私はサイキックレディに影響されて購入した、自分用のタロットカードで部屋が一緒の場合の未来を占ってみた。
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タワーのカードが出ました。
タワーは崩壊とかそういう意味を持っているカードで、まぁヤバそうな雰囲気が滲むよね。
うん、やめよう。部屋は別々だ。
2部屋取るため、値段もかさむ。
なのでバックパッカー向けの宿で、リーズナブルで、評価もまぁまぁなところを選んだ。
この決断が、彼にとってフレンドリーさを欠く振る舞いにならなければいいが。。
そう心配して、ギリギリまで2部屋取ったことを言わなかった。
そうして、ある日のレッスンで羽生君に、ホテルの部屋は取ったか聞かれた。
この時、2部屋取ったことを明かした。
最初羽生君は怪訝な顔をした。私+羽生君、お友達、の配置が頭をかすめた様子だ。
おいおい、イケメンだからって自分を買い被るんじゃない。
「一つは、あなたと友達、もう一部屋は私」
そういうと、彼は安堵の顔を見せる。
「フレンドリーじゃないと感じるかもしれなけれども、初対面だから。私は臆病なの」
「そうだね、次回は一緒の部屋にしよう。僕の家族と一緒にね」
「うんそうだねー」
私は半分適当に返事をした。私の財布が心配になる未来だ。
ぶっちゃけて言うと、その日は私の誕生日に当たるので、ちょっといい宿に泊まりたいところだった。しかし、ホテルが別で、彼らに安宿、自分にいい宿を当てがった未来なんてだいぶヤバイと思う。
なので、私はこっそり夜に一人で抜け出して、ちょっといいバーとかカフェに行って、一人静かに誕生日を祝い、自分を労おうという考えがあった。
だって未来はいつも不確実だし、人は思うように動かない。
人生にうんざりするほど裏切られているので、一人で良い時間を過ごすこと以上に、安心確実なことって私はないからだ。
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