最終日の予定は、午後便の飛行機に乗って日本に帰国するのみで、観光の予定はなかった。
だから朝のスターバックスは、私たち3人の共通イベントとしては最後のイベントに当たるだろう。
ゲップをし、吐きそうだなどと言う羽生君を横に、荷物をピックアップするためにホテルへ歩いて帰った。
胃が重苦しそうな羽生君は、やっとこさ歩きながら私に聞いた。
「次はいつ来るの?」
私はこれを、早くまた会いたいという意味合いに受け取った。
「来ようと思えば2か月に1回くらい来れるよ。私の会社はシフト制だから、事前に申請して置けば4日くらいの連休は繁忙期以外はいつでも取れるよ」
彼にできるだけ私を近しく感じて欲しくて、目いっぱい無理した日程を伝えた。
嘘じゃない。やろうと思えば2か月に1回来ることはできる。ただし私の財布の具合にもよるのだが。。
羽生君と並んで歩いてしゃべっているため、必然、友人君は一人で先に歩く格好になってしまっていた。
ほぼ羽生君と二人で話す時間になったが、何を話したか忘れたが、話しは弾んだ気がする。
ホテルに着いて一息ついた。
彼らの荷物は私の部屋に置かれているため、みんなで少しの間、私の部屋でゴロゴロした。
もしも私が初っ端から彼らと同室にする勇気があったらば、こういう時間がもっとあったんだろうな、とふと思った。
「そろそろ行こうか」
そう促されて、私たちは出発することにした。
エレベーターの中で友人君が
「きっとアメリカでボーイフレンドが見つかるよ」
などと言う。私がTOEIC800点を目指す理由として、アメリカにある支店に異動するチャンスを得るためと伝えたため、私は将来的にアメリカに行く、行きたいというのを知った上での発言だ。
例えそういう着地になるんだとしても、今こうして愛着のある羽生君が傍に居る時に、そんな未来は考えたくない。
「そうだねー(I see)」
と、私は適当に流す相槌を打った。
すると聞いていた羽生君が苦笑した。
私に友人君の言葉が全然響いていないのを見て取ったのだろう。
すると今度は
「俺の弟も、お前(羽生君)に恋しているんだ」
と羽生君に言い始める。
その言葉を言ってからわざわざ私の方を見た。
私が「え?え?」と言葉の意味の咀嚼に時間がかかっていると、
「弟はLGBTなんだ」
と言う。
「あぁそうなんだ」
正直ライバルなんていないで欲しい。彼の弟が羽生君のことを好き、というのに混乱したかのようにも見せつつ、ライバルの存在を感じて焦ったのが本心だ。
友人君に「弟も」と、私も恋しているかの文脈をお作りだったが、ファンではあるが慎重派の私は今の時点で fall in love と言えるかはわからない。
だからYesともNOとも言えない状態のため、黙って聞いていた。
そうやってやたらと友人君に謎の煽りを受けながら、私のリクエストに応えていただき、電車に乗って移動することになった。
フィリピンの電車はスリが多いらしく、大きな荷物を持った外国人が一人で乗ってはダメだと羽生君は言っていた。でも今回は2人が一緒だからデビューにはもってこいだ。
途中の駅でタクシーに乗り換える必要があったが、その駅ではマーケットが開かれていて、とても興味深かった。しかし二人は暑いのと疲れもあるのかもしれないし、マーケットに興味がないのかもしれなく、早足でマーケットを通り抜けるだけで、あまりじっくりは見られなかった。
そうしてタクシーをつかまえて空港に向かった。
空港に着いた。
二人はタクシーを降りて見送ってくれる。
私はこの旅で、羽生君に対する焦りの気持ちから、身をなげうつ計画すら頭をよぎったのだが、ご意見番のサイキックレディにセクシー路線は取らないように忠告されていたため、あまり接触をしなかった。
けれど別れ際には、ここぞとばかりにハグをして、羽生君にくっつこうとした。
背が高い羽生君は、ハグに応じながらも体があまりくっつかないようにかがんだ。
そうして、二人に手を振って、別れを告げた。
二人はこれからタクシーに乗り、そしてストリップを見に行くのだろう。。
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