必達TOEIC800点計画57 ~招かれざる客~

語学の勉強

「次はいつ来るの?」とか言ってたくせに。

別れた翌日に早くからメッセージよこしたくせに。

なんなのこの塩対応。

なんでも いいよ、いいよと言ってくれる羽生君が、顔を曇らせ、やんわりと断る。

しかも、お母さんの生徒さんは羽生君のバースデーパーティーに参加すると言うのに。

「君の泊まれる部屋もないし、ちょっと無理かな」

「でもSさんは、前回あの部屋とこの部屋にこんな風に寝たと言っていたよ。そうしたら私も泊まれるんじゃないかな」

「うん、でも君の負担になるし。大丈夫だよ」

「そう。。。」

そこまで言われて私は食い下がるのをやめた。

その様子を受けて羽生君は慌てたように付け足した。

「でも最終的には君の決断を尊重するよ。最終的にどうしたいか決まったら教えて」

こんな風に言われたら、とてもじゃないけど行きたいとは思えない。

だって私は、眠り姫に登場する招かれざる客の魔女のような存在だからだ。

絵本を読んでいた当時は、誕生パーティーに招かれなかったからと言って、あんなに激烈にキレて強烈な呪いなんてかけるなんて酷いじゃないかと思っていたが、今や私はのけ者にされた魔女の気持ちが痛いほどわかる。

悲しいやら、腹立たしいやら。

しかし、一応2回目の二十歳を迎える程度には長生きしているので、いちおう大人の顔をする。

「そっか。ところでこないだ、あなたのオススメのやつ見たよ」

と、全然関係ない他愛ない話しへ無理やり切り替えた。

関係ない話題に一見興じているように見える二人だが、今の誕生パーティーに関する微妙な空気は二人の間に流れたままだった。

「残り10秒だ、またね」

「またね」

そう言って、つつがなくレッスンを終えた風にした。

が、私の中には強大なシコリが残った。何なの?彼女でも来るんですか?あんな風に言われて行く人いる?

そうしてモヤモヤしながら、あんなに浮かれていた気持ちが冷や水をぶっかけられたようにシュンと消えてしまい、会社のアイコンにした羽生君との写真も早々に差し替えた。もう見るだけで悲しく腹だしくなるし、写真の中で笑顔でいる自分が騙された人のように見えた。

レッスン直後に羽生君からSNSのメッセージが届いた。

「本当に、もし来たかったら来てくれていいから。ぼくは君のことを家族のように思っているから」

と。

あのとっさに出た表情や反応を思い出すと、そんな言葉は私の心を上滑りしていくようだった。

生徒さんとしてのボランティア精神で迎え入れてもらっただけで、彼の誕生日には彼が呼びたい人たちが集うのだろう。やきもち焼きの私が参加したら、ガールフレンドなんて居た日には、羽生君はバースデーパーティーを満喫できなくなるだろう。

私は今日以外にも、羽生君のレッスンの予約を抑えていた。

それらは全て、羽生君が夜型から朝型に切り替えられるよう、応援を込めて取った朝のレッスン予約だった。

その数回をおざなりにこなして、すっと彼の前から消えようと思った。

けれども、その数回すらも作り笑いで乗りこなすのがしんどいと感じた。レッスンをキャンセルすることにした。

誕生日に招かれなかったことを根に持っていることがバレるのがかっこ悪いと思ったが、自分の気持ちが一番大事だ。

「今日はありがとう、わかった。私少し自分のことに集中したいから、一旦レッスンキャンセルするね」

「うん、大丈夫。僕はそれを心配していたんだ。君が自分のことに集中できなくなるんじゃないかって」

なにそれ、あなたのことに熱中するなと言うことだろうか。

「どうか怒り狂わないで欲しい。僕はただ君のことが心配なだけなんだ」

はぁぁぁぁぁ???!!!

まるで自己保身のように聞こえ、まるで私のことを思うフリをしているだけという気がして、もれなく怒り狂った。

南の島の王子様との奇跡の展開は、ここで打ち止めなのだろうか。

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