誕生パーティーに来なくていいと言った、その真意について、サイキックレディのお告げに背中を押されて羽生君のレッスンを再び取ったが、羽生君の回答は私の納得のいくものではなかった。質疑応答で余った時間をTOEICテキストに充てて、残り時間を無機質にやり過ごした。
羽生君は泣きそうな顔で
「Thank you have a good night」
と言って、レッスンを終えた。
その直後に胸が痛むような悲しさが突き刺さり、涙が流れた。
これは、私のものなのだろうか。
羽生君からメッセージが矢継ぎ早に送られてくる。
けれども私はもうそんなものを読みたくなかった。
そうしたところ、羽生君の友人君が生徒待ちの状態になっているのが画面上で見て取れた。
羽生君の友人君に私がコンタクトを取ることは、羽生君の嫌がることの一つでもあったので、もはや当てつけの気持ちもあって、友人君の所に駆け込んだ。
「Hello」
友人君とフィリピン以来の再会を果たす。そして、ちょっとした挨拶などをしながら、羽生君との関係性の危うさを吐き出した。
「彼の誕生パーティーに行きたいと言ったら、嫌な顔されて断られたの。私もう、フィリピン行かないかも」
かもではなく、私の内心では ”行かない” の確定だったが、ここでそんなに断定的な強い言葉を使うのも良くないと思い、すこし曖昧さを残した。
「え、本当か?たぶんそれは、お金のことを心配してだと思うよ。イントラムロスでぼったくりに会った後、俺たちは悔しくて眠れなかったんだ」
友人君の言葉を聞いて、羽生君が ”君の予算を心配して” という言葉に少し真実味が出てきた。
「またフィリピンに来るのかい?」
「わからない」
本当は、もう行かない だが、そんな風に言うことができなかった。
「もし来るなら、無料で行ける博物館もあるし夕日を見ることもできる。もしまた来ることが決まったら案内できるよ」
「ありがとう」
羽生君から送られたメッセージの着信音で、心がバタバタして、友人君とのレッスンを落ち着いてすることが出来なかった。ただ、友人君の言葉で、私の中でちぐはぐだった羽生君の発言が、意味のある輪郭を持ち始めた。
友人君に、お金の心配をしていたことを聞いてない様子を装って、そのまま羽生君のメッセージに返信をした。
「あなたは、私が誕生パーティーに行きたいと言ったら、それを拒否した。私はとても悲しかった。もしガールフレンドとかが来るようであれば、私は誕生パーティーに行きません」
「拒否なんてしていない。最終的には君の意思を尊重すると言ったよ。本当の所を言えば、君に誕生日を祝ってもらいたい。でも君の予算が心配なんだ。でも君はそれは心配ないと言った。だから心配しないことにした」
こうして羽生君のメッセージを読むと、一応彼の言い分に辻褄があうように思えた。
彼はとにかく私の財布が心配なのだ。
そしてあれだけの対応をしておきながら、最後に添えた「最終的には君の意思を尊重するよ」という言葉に、それだけの比重を置いているアンバランスさも、とんちんかんな彼の個性を感じさせているようにも思えた。
そしてこの彼のスタンスを裏打ちする、友人君の発言が、この日本人には理解しがたい状況に真実味を添えている。
日本人同士では、決してあり得ない行き違いだが、金の重さが日本と違うと言われるフィリピンでは、起こりえる状況なのかもしれない。
「わかった。あなたは本当は思いやりのあるいい人だったんだね。誕生日、行けたらうれしいな」
打開する道はない。
もうこの状況から、私が自発的に旅費を捻出し、時間をやりくりし、強い意志を持って行動することは極めて困難だ、と思う事態だったが、なんとこんな形でブレイクスルーすることとなり、再び私はフィリピンを訪問することが決まったのだ。
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