今の住処は、近所のおばあちゃんが飼えなくなった猫を引き取るために越したところだ。
前のエリアでは、うちの猫は地域のアイドルキャットで、特に彼は女性が好きで幅広い年齢層のガールフレンドを抱えていたものだ。私もそのうちの一人だった。
今の住まいに決めた一つの理由として、前のエリアほどではないが、近くに数棟アパートが建っていたため、以前のエリア同様、たくさんの人に可愛がってもらえるだろうという目算があった。
しかし、今のエリアは蓋を開けてみると、ご近所は一人暮らしの男性が多く、私の知る限り、うちの猫のお友達は、向かいの戸建てに住んでいる子供ぐらいのように見受けていた。
私のアパートには4つの部屋があり、数か月前に1室空いた。
しばらくその部屋は空いたままになっていたが、数日前に不動産屋から私の携帯に電話があった。
「こんにちは、●●の佐藤ですけど」
普段全然お世話になってないのと、電話番号登録をしていなかったため、どこの誰がかけてきているのかさっぱりわからなかった。
「すみません、もう一回行ってもらっていいですか」
「あの、アパートを管理している●●の佐藤です」
そう言ってもらえてようやくどこの誰かが理解できた。
「こんにちは、お世話になっております」
「すみません、ちょっとお聞きしたいことがあるんですけれども、今アパートの駐車場ってどこが空いてます?」
そんなの自分で管理しろや
と思ったが、まぁ書類上の状況と実情がズレることもあるかもしれないし、何より引っ越し直後に猫が失踪してしまい、こちらの佐藤さんにちょっぴりお手伝いいただいたこともあったので、大人しく現状を話すことにした。
「今、私は101号室に正対する場所を使っているんですけれども、私の左隣を101の方が使っていて、右隣を二階のお隣さんが使っています。一番奥が空いているはずなんですが、外部の方と誰か契約をされているのか、時々うちのアパートでない方がそこに停めているのを見かけます」
「あぁ、了解です。そう奥は別棟の方に貸しているんですよ。では奥が空いてるんですね。ちなみに今度102におばあちゃんが引っ越してくることになりました」
おぉ、待望の女性。しかもうちの猫の好みどストライクのおばあちゃん。
これはおばあ好きで、おばあキラーなうちの猫にとって、いいお友達が増える良い機会だ。
あわよくば、長期で外出する際には彼女にエサやりをお願いできるかもしれない。
「そうなんですね、うちの猫、おばあちゃん好きなんで良かったです」
そう言って、電話を切った。
そうして、その空き部屋にいつおばあちゃんが越してくるのだろうと心待ちにしていた。
そうして今日、買い物から帰ってアパートの駐車場に停めようとしたら、見知らぬ車が私の場所に停めている。
車の主は慌てて気が付き、車をどけた。
どうやら新しく越してきたおばあちゃんの友達らしかった。
車から降りると、おばあちゃんが挨拶をしてきた。
「新しく越してきた、●●と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします。うち猫を飼っているんですけど、女性が好きなんでもし良かったら仲良くしてあげてください」
「あぁ、昨日荷物を運ぶためにドアを開けていたら部屋に入ってきてねぇ。人懐っこいねぇ、飼い猫かねぇ、何て言ってですよ」
部屋入っとんのかい
私の想像の斜め上を行く猫だ。
「すみません、悪さをする子ではないと思うんですけれども。前の飼い主さんがおばあちゃんだったので、たぶん懐かしいんだと思います。仲良くしていただけたら嬉しいです」
そういえば、昨夜うちの猫は、私が帰ってきた後、車の音を聞きつけて慌てて外に飛び出してくのを見た。
普段は私が帰宅後はほとんど家にいて、たまに思い立ったように外に出たりもするが、昨日は明らかに車の音に反応していたので、どこの誰のところに行ったのか不思議に思っていた。
十中八九、下のおばあちゃんが帰ってきたのを聞きつけて飛び出していったに違いない。
まぁ、なんにせよ、彼に心浮き立つお友達が出来たことは良いことだ。
▼お金を稼ぎながら冒険したい人は、コチラ▼
山奥の温泉旅館で展開される仲居サスペンス劇場を展開中「リゾバ冒険譚」シリーズと一緒にどうぞ!
▼海外への冒険への扉は、コチラ▼
イケメンフィリピーノ・羽生君との交流がはじまる「必達TOEIC800点計画」シリーズと一緒にどうぞ!
コメント